玩具の型というのはお金を生み出す資産とみなされており、会社が倒産・廃業したりするとほかのメーカーに移ることは珍しくありません。また、製造元と販売元が異なっており、同じ製品が異なるメーカーから発売されているなんてこともあります
今回紹介する『ゼンマイ 4輌L特急』もいろいろややこしい背景がありそうな玩具です。この玩具自体は現在も
有限会社三幸製作所で同等製品を入手可能です。ただ、リンク先を見てもらうとわかるのですが三幸製作所で販売しているL特急は3両でこちらは4両なんです。また、三幸製作所のそれは箱入りなのに対して、俺が買ったこれはブリスターパックに入っていました
で、メーカー名を推測するものはただこれだけ
台紙についていた『WEATHER BIRD』なる刻印
WEATHER BIRDといえば自動車の玩具をゴニョゴニョな感じで販売していたメーカーというイメージなんですが、この製品に関してはSTマーク(※)を取得しているし(といっても1987年以前の取得なんですが…STマークの有効期限は2年では?)、まさかブリキの型をアレするなんてことはやったとしても割に合いません。なので、三幸製作所の製品を販売元としてWEATHER BIRDが販売したとみるのが正解かと思います
ちなみにこの製品が三幸製作所製と断定する根拠は、JTBパブリッシングの『鉄道玩具大全』で三幸製作所の工場レポートが掲載されており、そこにこのような写真があったからです
出典:『鉄道玩具大全(JTBパブリッシング)』
まあ、どこかの工場が倒産して木型が三幸製作所に流れ着いた可能性は否定できませんが、妻面の微妙なRは三幸製作所の特徴(イチコーは逆にエッジを出したがる傾向がある)だと思うので、三幸製作所オリジナルだと今のところは考えています
さて、このL特急の特徴は何といっても「ゼンマイ車以外1軸」という点だと思います。鉄道玩具でどんなにデフォルメしても基本は二軸以下にはならないものですが、このL特急は切り離しができない固定編成という割り切りでゼンマイ車以外の車輪を一軸にしてコストを下げています
たしかに固定連結ならお互いがお互いを支えるので理屈の上では傾きませんが、最後尾者のバランスが微妙に左右対称ではないので運転台側に傾き、3号車がそれを受けて反対側に傾いてしまいますので、一直線の編成にはなりません。まあこれも割り切りでしょう。むしろ1円でも価格を下げようという心意気を買いたいところです
さて、この正面ですが189系にしちゃあ妙に正面が丸まっています。スカートは新幹線のそれを流用していますので、それに引きずられてこのような形になったのでしょうか
いえいえ、実は元の型はこいつなんです
出典:『鉄道玩具大全(JTBパブリッシング)』
メリケンのF9ディーゼル機関車ですね。メリケンの電気式ディーゼル機関車が489系に化ける。これが玩具の痛快なところですよ。だって、F9と189系って実車見たら何ひとつ似てませんよ? それが玩具だとそれっぽくなるんだから、まさに魔法です
これがあるから、玩具って面白いんですよね
(※)STマークは1971年に制定されたもので、最近の製品の場合STロゴのわきに審査年が西暦下2桁書いてあります。たとえば2009年審査なら「
ST9」という具合に。ところがこの製品はSTロゴのみなので相当古い製品ということになりますがはたしてどうなんでしょう?
そしてSTマークの取得には
JANコードが必要です。STマークのそばにそのJANコードの表記が義務付けられているのですが、この製品の場合T1014046がそれにあたるのでしょうか
JANコード制定以前はSTロゴの近傍に合格番号が記されていました。おそらくT1014046はST合格番号だと推測されます。合格番号をJANコードと共通化したのは1987年なので、この製品はそれ以前の発売だと推測ができるわけです
ただ、STマークの有効期限は2年。つまり1989年には再審査を受ける必要があって、少なくともその時にJANコードに置き換わってないとおかしいのですが…ちなみに俺が買ったのは少なくとも2000年より後です。う~む…
それに玩具協会の住所が古い住所(1988年に寿から駒形に移転)なんですがそれは? いろいろなぞの多い玩具です
参考までに現代のSTマーク。2005年審査でJANコードも正規の12桁+チェックディジットです