新幹線電車が現代のような『完成された速い通勤電車』ではなく、『夢の超特急』だったころ、新幹線電車というのは子どもにとって憧れでした。したがって新幹線電車の玩具というのはそれはもうおびただしい数発売されました。その一部はさいたま市の鉄道博物館にも展示されているので、一度ご覧になることをお勧めします
これら玩具の多くは、0系新幹線電車が登場してからそれをモチーフにしたものが主流ですが、少しでも早く発売して他社を出し抜こうとしたのか、1000形新幹線電車や国鉄が発表したイメージパースの車両を玩具化したものまでありました
サビサビだわひん曲がっているわでお見苦しいのですが、これもそんな「せっかち玩具」のひとつでしょうか。1000形新幹線1006号車をモチーフにしたと思われる玩具です。新幹線電車なのに両運転台というのが千両ですが、客車列車とは違い新幹線は電車である。ならば両側に運転台があるべきであるという製作者の見識を感じられて嫌いではありません。ただ、ならば反対側は1003号車の正面形状にしてほしかった気もしますが、玩具にそこまで求めるのは酷というものです
それにしてもなかなかどうして、1006号車の特徴をよくとらえていると思いませんか? ノーズの形はどちらかというと曲面ガラスの1003号車っぽいんですが、運転台下の緩やかな下り勾配はちゃんと1006号車を主張していますし、こいのぼり型ではないヘッドライトも1000形のそれです。窓枠の銀縁もちゃんと1000形のそれですし、運行窓のA-021も適当な番号を入れたものではないことに好感が持てます。最高速度256㎞/hを記録した1000形B編成はまさに新幹線の星みたいな存在でしたから、これはこれで子供たちは喜んだんじゃないでしょうか
ところでこのおもちゃ、ゼンマイ動力で走るのですが、車輪が斜めに組付けられています。なので走らせると以下の動画のようになります
当時の家庭はそれほど広くなかったのでしょう。まっすぐ走ってすぐに壁にごっつんこよりは、四畳半くらいのへやをぐるぐる回ったほうがおもしろいんじゃないかと製作者は考えたんだと思います。これも立派な見識でしょう
新幹線が好きな俺としても、なかなか好感の持てるデザインの玩具です