前回はすっとこどっこいな鉄道玩具として、神崎レンタルサービスの『トレイン』を取り上げましたが、今回は9mmゲージ鉄道模型と玩具の違いを踏まえつつもなお、これ結構がんばってるんじゃね? と好感の持てるE4系新幹線を紹介します
鉄道模型と鉄道玩具の違いは、価格にあります
鉄道模型もそりゃあ天井知らずというわけにはいきませんが、ディテールをつめたぶん価格が上がることはそれなりに容認されます
鉄道玩具はまずは価格ありきです。最初に上代700円といえば700円で作らなきゃいけません。『ここのバリ取りたいんだけどそうすると単価1円20銭あがっちゃうんだよなあ。でも取ると絶対かっこよくなるんだけどなあ』といってもバリをとることは許されません。それが玩具の世界です
それでもまあ玩具でも40円50円くらいなら値上げが容認されなくもありませんが、カプセルトイとなれば上代200円・300円を動かすことはできません。何があっても200円なら200円で作らなきゃあいけない。ですから「わかっちゃいるけど許してくれよ」という妥協を強いられます
神崎レンタルサービスの『トレイン』も、アベノミクスによる円安及び消費税増税(
公式サイト参照)のあおりを受けてか、新規車両の金型はどんどんシンプルになっていきました。前述のEF81などは目も当てられない惨状ですが、そんな中でも新幹線はそれなりに悪くない出来なのです
いうまでもなく手前が『トレイン』で奥がKATOの9mmゲージですが、『トレイン』もがんばっていると思いませんか? KATOのE4系は8両で21,000円+税もします。1両あたり2,835円です。『トレイン』は1/14の価格でよくやってると思います
E4系の胆は、新幹線ではじめてエリアルールの概念を導入したノーズ形状にあります。すなわちノーズ先端からの断面積変化を一定にして、空気の流れを最適化するわけです。E4系では運転台が出っ張っている分両サイドを削ってつじつま合わせした結果、手前のライトがちょっと出っ張っているのが特徴となっています
真横から見てみましょう。いったんヘッドライトで盛り上がったノーズは運転台分の断面積を吸収するためにいったん軽く下がって再び上がる、逆への字の形状をとります。これがエリアルールなのですが、『トレイン』も微妙ながらそれなりにエリアルールの形状になってます。ここがちゃんとまとまっているのでE4系らしさはしっかり出ています
また、金型の分割線のところにモールドが来るのを嫌って乗務員扉が小さくなって入るものの、ひさしの一部を切り欠いてドアの一部がノーズにかかっている点を表現しているのも新幹線好きとしてはうれしいところです
おそらく神崎レンタルサービスの担当者は鉄道にはあまり興味がないことでしょう。それは造形を見ればわかります。しかし興味がないならないなりに、しっかり実車や模型を観察していることは伝わってくるので、少なくともこの商品は200円玩具としてきわめて誠実であると断言してもいいと思います
ところで上で、実車や模型をよく観察して…と書きましたが、おそらくこのE4系はKATOのE4系を参考にしているのではないかという気がするのです。というのは妻面なんですが
どういうわけか、幌の表現(らしきもの)があるんです
実車のE4系の連結面なんて(基本固定編成なので)見る機会はありませんし、神埼レンタルサービスにそういった資料があるとも思えません。であれば他の模型か玩具を参考にしているはずなんです。なんせ妻面に使われている黒は、ここ以外に使ってないんです。わざわざ一色余計に塗る手間を増やしている。200円商売のカプセルトイではありえない話です
ですから考えられるのは、見えない妻面は鉄道模型を参考にしたんではないかという仮説
TOMIXのE4系は通電カプラーなので幌の表現はありません。となると残るはカトーのダイヤフラムカプラーではないでしょうか
また、二つ上の側面からのアングルの写真を見ていただくと、屋根と側面のパーティングラインがKATOのそれとまったく一緒なんですよ。神崎レンタルサービスは熱心に参考にするあまり、このパーティングラインまでまねしてしまったのかなと思わずにはいられません。ちなみにTOMIXはここまでパーティングラインはめだっていませんし、実車にはそもそもありません(あったら困るわ)。もうひとつついでに言うと、神崎レンタルサービスE4系はエアコンを銀色で塗装していますが、実車はどちらかというとグレーだし、TOMIXは成型色のままです。エアコンを銀に塗ってるのはKATO製品です。ね?
このように、200円玩具としてがんばっているなと思うと同時に、模型を参考に「どこをどうデフォルメするか」を必死で考えている神崎レンタルサービスを想像すると、このE4系がいっそういとおしく思えてきますね