Tumblrからの再録です
N700Sのデザインいついて(JR東海プレスリリース)
- ・ N700系シリーズの形状を進化させた「デュアル スプリーム ウィング形」小牧研究施設における技術開発の結果、左右両サイドにエッジを立てた形状とし、走行風を整流することで更なる環境性能向上を図っています。
…これはまたちょっと息を呑むというか、なるほどこういうカタチできたかというか。個人的な感想だけどN700系を完全に過去のものにしたわこれ。間違いなく美しい
いや、そこ突っ込めよ。高速列車においてノーズはシンプルなほうがいいに決まってる。E5系なんかもそうだし、微気圧波の影響があまりない海外高速鉄道なんかは三次曲面の構成ではなく二次曲面のシンプルな形状に収斂しようとしてるでしょ? 単純にトンネルドン対策を考えるならノーズを伸ばして断面積変化を緩やかに、すなわち二次曲面のシンプルなノーズで空気を跳ね上げるのがいいんですよ。なのにN700Sはそうなってない。なぜか
まずはこの丸いノーズ先端に注目してください
ノーズ先端がとがってないってのがスピード感を殺いでいる面がなきにしもあらずなんだけど、実際のところ(トンネルドンをのぞけば)高速運転と正面のとんがりはそこまで大きな相関関係はなくて、たとえばフランスで331km/h出したときの機関車は半流線型の丸妻だったわけです。実際のところ、エッジを面取りすれば切妻でもかなり空気抵抗が逓減します。むしろここの断面積変化が重要で、三面折妻のように断面積変化が緩やかだと切妻と大して変わらないんですが、エッジを面取りして断面積変化を急にすると、後方への整流がすこぶるよくなるんです。だから先端はこの程度で十分効果を発揮します
でも鈍い正面では抵抗がそれなりにあるのでは? と考える向きもあるかもしれませんが、ノーズの先端に負圧を作って空気で「見えないノーズ」を作ることで、空力的にはとがったノーズと同じ効果が出るので大丈夫です。
もちろんそんなややこしいことをせず、ノーズをもっと伸ばして二次曲線で構成すればもっとシンプルに決まるんだけど、東海道新幹線でそれをやろうとするとミニマムで13.5m、いろいろ考えたら15mのノーズが必要になるわけです。しかしノーズ長を伸ばすことは定員を減らすことにつながるのでJR東海としてそれは容認できない。最初のドアにまでノーズを食い込ませて10.7mでまとめなきゃならないわけで、そうなると先端は平たくして、断面積変化を可能な限りきつく、そして一定に流す必要があるというわけです
さらにN700Sのノーズのキモは、このクルマが最後尾に来たときに真価を発揮するんです。車体に貼り付いてきた空気が最後尾で剥離するんだけど、溝を掘ることでそれを整流できるのよ。いや、整流というか溝の上にできるエッジ部分から上方に空気を引き剥がすことができる。F1で言うところのリアウィングの側面部分に当たる効果が期待できるのよ
上から見るとわかるでしょ? この断面形状の変化。左右のエッジで側面に張り付いた空気を引っぺがして、中央の盛り上がりはトンネルドン対策の断面積変化による盛り付け。惚れ惚れする美しさですよ
ただ、ついたては後流の整流に有効なんだけど、それをあまり大きくすると前方視界が悪くなるし先頭車になったときに断面積変化の自由度が狭まって空力的に不利になる。なわけでどこに妥協点を見出すかがこのノーズのキモになるわけで、これは下り列車なら16号車の指定席を買って乗ってみなくてはならないレベルで期待が持てる
この形なら最後尾になったときの横動、N700Aより確実に向上してるはず。そのくらいこのノーズは美しい。「意地でもカルマン渦ぶっ殺す!」という執念めいたものを感じるのですよ
さすが自前で風洞持つと違うね。これは本当に期待できるよ!
一方で、これも楽しみ。見事なまでに金を使わず頭を使ってる。いや、この側面図だけでよだれがでたヨ本当に。これは2018年まで乗らずに死ねない。このリリースの内容だけで、俺の中ではN700Aが一気に陳腐化したもん
普通車の座席。いいねえ。このランバーの薄っぺらさこそがJR東海ですよ。かけごこちは悪い。断言するけどこの座席のかけごこちは悪い。でも新幹線はこれでいい。へたにランバーを厚くして収容人員が減るのは東海道新幹線では正義じゃない
座席に関しては一貫して不誠実な態度を新幹線も在来線も取り続けているJR東海だから、N700Sの座席にも1ミリたりとも期待しちゃいけない
で、背面が薄くなってる理由が「後席の圧迫感を抑えるため」ってのが千両よ。実利より見た目を取ってかけごこちを落とす。もう俺はこれが痛快でね。これでこそJR東海ですよ。物のわからない奴のためにかけるコストはないって露骨に言ってるんだもん。この傲慢さを俺は最大限に賞賛したい
でもかけ心地が悪いからなんだって言うんですか。お前らの言うとおりリクライニングしてるじゃねぇか。ついでにザ面も持ち上げて疲れないようにしている。それ以上何を要求するんだよ? っていうメッセージがひしひし伝わってくる。しびれるじゃないですかこの傲慢不遜なメッセージ! こんないすなら5時間座って腰を痛めたくなるってものです
だいたい、新幹線の中でももっともスペシャルな走りを要求されるN700系なんだもん。F1マシンの座席にかけごこちを要求するようなもんだ。つまり新幹線の座席にかけ心地を求めるなんてお門違いもはなはだしいんです
とはいえリクライニングで座面の傾けるあたりに「やさしさ」が残ってる。普通それやったら質量が増えちゃうんだけど、シリンダ位置を再検討して軽量化を損ねず、リクライニングの弊害を最低限に抑えてる。素晴らしい。ここまで無慈悲を貫いて最後に見せるやさしさ。これは感動以外何もないですってホント
いや、本当に惚れ惚れするインテリジェントな座席ですよ。速く坐って腰を痛めたいです
このように、JR東海は本気です。超電導リニアと新幹線の二本柱でかっちりやるつもりだ。N700Sのデザインなら10年は最前線で戦えるぜこれ!
まあ本当に楽しみなんだけど、「N700」の要素がどこにもないのに「N700S」を名乗るのはちょつと…これもう完全に別形式よ?