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サマンサのおもちゃ箱

趣味の話ばかりになってきたので改題。模型やおもちゃや実車など、鉄道にかかわるそんな話をつらつらと。好きなジャンルは民鉄と新幹線ですが、最近は新幹線成分が多めですね

高速鉄道「復興号」デビュー=習主席スローガンで命名-中国

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高速鉄道「復興号」デビュー=習主席スローガンで命名-中国

※この記事はTumblrからの転載です


出典:Sankei photo
 中国の高速鉄道は従来、川崎重工業など主に外国の技術を取り入れながら開発を推進してきた。復興号は中国が完全な知的財産権を持つとされ、海外市場で今後、新幹線輸出の拡大を図る日本と競合するとみられる。 従来の高速鉄道車両は、胡錦濤前主席のスローガンに基づいて「和諧(調和)号」と名付けられていた。現在も全国各地を結ぶが、復興号にバトンタッチしていく。 中国メディアによると、復興号は時速400キロ以上が可能。ビジネス利用が多い「ドル箱路線」の北京-上海を6時間弱で走る。
時事ドットコムニュース










※政治的な話は一切しません

 さて、スペックがわからんのでなんともいえんが、ノーズの形状を見る限りでは、ゲンダイのトレンドを押さえつつ中国独自のメソッドをしっかりと持ってるよね。ノーズ側面ををえぐっているのは断面積変化のつじつまあわせ。日本だとここに微気圧波の調整が入るから盛ったり削ったりが激しくて三次曲面の集合体になるんだけど、大陸では断面の小さなトンネルもなければ連続した市街地が続くわけでもないのでシンプルな二次曲線でまとめている。
 ノーズはシンプルにまとめられればそれに越したことはないんです。運転台もノーズに埋め込んでしまえば斯様にシンプルにまとまる好例だと思います。日本の場合精密停車が必要なので、側面視界をおろそかにできないためコクピットを飛び出させていますが、そのためにコクピット周辺で断面積変化が大きくなってしまう。それを防ぐために前後でノーズの曲面を調整していかなくてはならず「余計な仕事」が増えてしまう。その結果があの複雑なノーズ形状なわけです
 このあたりもお国の事情が反映されるところです

 ただ、ノーズ~スカートの二段階のくびれは個人的に疑問点がないわけではない(空力的には80年代後半に否定されてる)けど、ノーズ上面は中国の線形にあった空力特性に見える

 すなわち断面積変化を緩やかにして空気を上方に跳ね上げる構造ながら、日本のように市街地をかっ飛ばすわけでもなく軽便鉄道のようなトンネルをくぐるわけでもないのだから、シンプルな二次曲線の組み合わせにして、高速運転に対応してる。足回りがまったくわからないので断定はしないけど、(ギアリングを2.42あたりに設定して、力任せに加速すれば)400km/hはあながちホラではないんじゃないかな?

 たしか中国に技術供与したモータは、E2系のMT205。定格4140rpm、ピーク6,120rpmのよく回るモータである一方、質量450kgと新幹線のモータにしては重い。つまり峠越え用のトルクもそれなりに有している優秀なモータなのよね

 たまたま手元にMT205、というかE2系の力行曲線があったので上に画像として載せるけど、3‰明かり区間だと、トルクと走行抵抗が300km/hでクロスする。つまりここが均衡速度になる(トンネルは走行抵抗を10%増しで計算)んだけど、平坦線だとギアリング3.04なのに320km/hくらいまで引っ張れる

 つまり言い換えれば適切な空力性能を持ったノーズを取り付けて、ギアリングを2.42(Fastec360Sがこのギアリング)くらいにすれば、400km/hはともかく380km/hくらいなら(騒音とかそういう面は考えないとして)平坦線条件で達成可能なんじゃないかなって気がする。電流値も300km/hで105Aくらいだから、ここでガツンと144Aくらいまで活を入れてやれば回ると思うんだよね

 で、MT205モータってのは1994年、今から20年以上前の技術だから、今だったらもっと軽くてよく回ってトルクの出るモータを作れるだろうしね

CRH2C のギヤ比は 2.37[14]、主電動機出力は 365 kW である。

CRH2-Wikipedia


 想像の上を行ってた。365kwという出力はおそらく(根拠はないけど)端子電圧を2300V、電流は144Aとかそんな感じか。2.37って言うギアリングだと、低速側はトルクを稼ぐために200Aオーバーで起動したりするのかな。とりあえず1.6km/h/s程度の加速力でよければまあそれほど難しい数字じゃない

 なんていうかすごく大陸的な走りをイメージできるね。駅間距離100kmくらいの直線が続く大陸の線路を悠然と加速して380km/hまで加速する新幹線。日本のそれとは走りの感覚がずいぶん違うんじゃないかな

 それにしてもやっぱりスカート部の造型が疑問なんだけど。ここで流速が落ちて抵抗になるんじゃないかな…って考えるのは、島国軽便鉄道の新幹線ばかりみているから「すっげー無駄」に見えちゃうせいかもしれない

 スタイルだけ見ると〈復興〉はEU規格への対応も容易みたいだしね。日本は軽量化を第一としてるから、EU規格にはどうしても(現状は)適合できてないし、そもそも日本国内ではそれをする必要もない。それはそれで間違っちゃいないんだけど、海外への販売を考えたときEUの安全基準に適合してないってのは足かせになるよねやっぱり

 「専用軌道を300km/hで静かに走ります」というセールスポイントに、世界各国がなびくと思えないんだよ。各国の気持ちは「もう少し安くできないの?」だと思うし

 ここから先は政治の話もからむのであれだけど、JR東海のN700Sは海外への販売ももくろんでデザインされている。N700系の価格が1両あたり4億6000万円だけど、中国は当然これより安く造れる(日本のような病的な環境性能が日本以外の国で必要とされてるとも思えないし)だろうから、もし日本が新幹線を世界に輸出しようと思ってるなら、日本基準の性能を見直す必要はあると思うよ

 もっとも、それをしたからって安く造れる保証はないんだけどさ



以下は余談の余談

出典:内部資料

 上の画像は300系新幹線の性能曲線。えっかくなのでE2系と比べてみると面白いかと。

上から引張力、加速力、走行抵抗のグラフです

 加速力は1.6km/h/sを140km/hくらいまで維持するけど、300系はそこから走行抵抗に派手に負けて、270km/hでは加速余力がほとんどない。トンネルでは270km/hから上には加速しないようなヘロヘロっぷりになるのが、このグラフからわかります。グラフにはないけど平坦線均衡速度は298km/h。なんとなくそのへんで引張力と走行抵抗の線がクロスしそうですよね。ギアリング2.96、ピークで5,470rpmを出すモータでも10M6Tならこんなもんです

 E2系は160km/hくらいまで1.6km/h/sを維持して250km/hから上はのほうはモータの回転数とMT比で維持してる感じですね。8M2Tの10両つなぎならギアリングを加速寄りに振ってもこのくらいの性能が出せちゃう

 じゃあ同じことが東海道新幹線でできるかと言ったら無理です。東海道新幹線は列車密度も高く16両つなぎなんで、電力供給がシビアなんだな、ってのがこんなところからもわかるわけです

image
出典:新幹線テクノロジー(佐藤芳彦/山海堂)

 だからこそ、乾いた雑巾を絞るような軽量化でモータ車の数を増やさなくてはならなかったのです。たとえばC/I(主変換機)なんて300系は2,825kgあったのがN700系では1,538kgまでダイエットしたわけです

 なお、N700Sでは1,000kgを切る予定です

 話がだいぶ脱線しましたけど、新幹線ってのは国土や路線事情に最適化する、標準化のたいへん難しい電車なので一概に中国がすごいとか日本がすごいとか言えないんですよ、というお話でした

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