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サマンサのおもちゃ箱

趣味の話ばかりになってきたので改題。模型やおもちゃや実車など、鉄道にかかわるそんな話をつらつらと。好きなジャンルは民鉄と新幹線ですが、最近は新幹線成分が多めですね

MONSTER SURPRISED YOU


 鉄道車両を英語で言うと「Rolling Stock」。つまり資産だ。鉄道車両は趣味で乗り回すのではなく、これを元手にお金を稼ぐ道具であることは同意いただけるだろう。
 儲けを出すなら当然、原価は安ければ安いほどいい。特に普通運賃しか徴収できない一般型の車両であれば、車両の制作費というのは安くしないとなかなか元手が取れないことになる。
 特急型のように特別料金を徴収できるなら、高速化のための新技術を導入するのもやぶさかではない。しかし普通運賃だけで儲けを出さなくてはならない一般型には高性能よりも汎用性、という考え方になるのは当然だろう。
 しかし、世の中には例外がある。
 キハ201系。編成重量118トンを450馬力エンジン×6機で駆動する。人呼んでモンスターマシン。気動車に電車並みの性能を持たせ、電車と連結して電車が手加減無しに走れるようデザインしたJR北海道の気動車だ。
 キハ201の加速はとにかく力強い。起動するやいなやトルクコンバータで5倍程度まで増幅したトルクで低速側はぐいぐい加速。あっと間に直結段に入って湿式多板クラッチのおかげでエンジンの回転を落とすことなく50キロ、90キロでがんがんシフトチェンジしていく。最終減速比についてはわからなかったが、ほぼ同スペックのキハ261が1.86だから、エンジンの定格いっぱいいっぱいまで引っ張れば、φ780ミリ条件でも130キロどころか160キロにも届くのではないかという高性能を見せる。本来1.86なんてファイナルは一般型の気動車に使うような数字ではない。特急型気動車で、高速運転の始祖といえるJR四国の2000系のファイナルが2.353なのだ。それをさらに上回る1.86というファイナルが以下に「常識はずれ」かわかろうというものだ。
 しかし、いくら直結段が4段あるからといっても、ファイナルまで引っ張る間の減速比の間隔に段差があったら中間加速がダレてしまう。ところが速度計を見ながら乗っているとパワーがだれる区間がないのだ。キハ201系公式の加速力は2.2キロ/秒だが、時速100キロ程度まで2.1~2.3キロ/秒を維持し、電車とは異なり実にフラットに加速していく。クラッチのシンクロが湿式多板なので変速の際にもパワーのロスがほとんどない(実際、ギアチェンジの瞬間は意識していないとまるで気づかない)。これは450馬力という大馬力エンジンのトルクに任せ、適切に4段の直結段をエンジンのパワーバンドに割り振った繊細なセッティングの賜物だろう。もっともその結果得られたものが暴力的な加速というのもなんだが。
 電車並みの性能、といううたい文句は伊達ではない。それどころか速度域いかんでは電車、この場合は連結相手の731系よりも力強く走ることもある。731系とキハ201系が連結し、キハ201系が編成の後ろにつながっているときに731系側に乗車していると、60~80キロあたりで後ろからぐいぐい押される感覚を味わうことができる。いっておくが731系がアンダーパワーなんてことはない。キハ201系が化け物じみているのだ。
 編成出力2,700馬力。これをキロワットに変換すると1,986キロワット。編成重量が118トンだから、トン当たりの出力は16.8キロワットだ。連結相手の731系がトン当たり出力9.2キロワットだから、まあ単純にエンジンとモータのパワー特製を比較するのは危険だか……その桁外れのパワーを感じてもらえることだろう。
 そしてキハ201の恐ろしいところは、この馬力は単なる直線番長ではないということ。車体傾斜装置を採用し、車体を2度傾けることで曲線の通過速度を高めている。つまり、最高速度かそれに近い速度域で走れる区間がさらに長くなるというわけで、駅間距離が詰まる札幌都市圏だろうが、駅を出たらしばらく止まらないようなローカル線まで路線を選ばない。実際、デビュー当時は倶知安~小樽間ではその高速性能を活かして18分所要時間を短縮、さらに小樽~札幌間では、その加速性能を活かして気動車快速と同じ所要時間で7駅余計に停車する各駅停車で走ってしまったのだ。
 なんとなれば関東鉄道あたりで普通列車として走らせても十分以上の走りをするだろう。もっともそのとき直結4段を使う機会はないだろうが。少なくとも「走り」に関しては万能といって差し支えない。
 そんなわけで、キハ201系は文句のつけようのない高性能車であることは疑いの余地はない。しかし、この車は3連4本で製造が打ち切られている。高性能は人を幸せにすることは疑いの余地がないのに、なぜか。
 あまりにも装備がかさみ、1両4億円という、これまた一般型としてはありえないような価格になってしまったためだ。
 くわえて1両あたり2台のエンジンにトルクコンバータ、ドライブシャフトなどメインテナンスの手間も他の気動車に比べ倍になる。エンジン2機搭載なので重量も先頭車40トンに中間車38トン。2エンジンでよくぞ40トンに抑えたともいえる(実際車体はかなりの軽量化をこらしている)が、ハイブリッド気動車と同等の重量となれば絶望的に重い。重たいということは当然それだけ経済性が悪いのだ。ちなみに1エンジンのJR東日本キハ110系は30.8トンだ。
 おまけに車体傾斜装置もついているためこれまた手間がかかる。最近ではエンジンとの同期に不備が出て車体傾斜装置は殺しているようだが、とにもかくにもこんな手間のかかるクルマを、普通運賃だけしか徴収できない車両に採用するのはどう考えたって無理がある。しかもワンマン運転もできないので、閑散区間でも車掌乗務が必要となり、この点でもコストがかかる。走っていても止まっていても金食い虫。これではいくら高性能でも、鉄道車両としてとても成立しない。
 一方でキハ201系の相棒である731系は、ピーク電流を30パーセント削減、回生率も20パーセントと、高性能でありながら省電力化を果たした。もちろん編成重量で言えばキハ201よりも18トンも軽い。これが正しい進化のあり方というものだろう。
 キハ201系の売りであった電車との連結も、現在では3本だけ。しかも非電化区間と電化区間を直通し、なおかつ併結するのは1本だけになっており、キハ201系ならではという意義も限りなく薄まっている。
 それでも、だ。
 それを差し引いても、だ。
 キハ201系の走りは一度体験しておくべきものだ。電車とは異なる、加速が途中でだれることなく一気に110キロまで上りつめる、トルク(編成で960kgm!)にものを言わせた暴力的かつ官能的な走り。これを普通運賃だけで楽しめる悦楽は、わざわざ北海道まで出かけて体験する価値がある。
 こんな贅沢な気動車、日本中探したってこの12両しかないのだ。
 MONSTER SURPRISED YOU.
 乗ればきっと、モンスターに魅了されることだろう。
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