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サマンサのおもちゃ箱

趣味の話ばかりになってきたので改題。模型やおもちゃや実車など、鉄道にかかわるそんな話をつらつらと。好きなジャンルは民鉄と新幹線ですが、最近は新幹線成分が多めですね

数奇な運命に揺られるが如し

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数奇な運命に揺られるが如し


 ちょっと変った電車に乗りたいと思うなら、えちぜん鉄道のMc6101形などはどうだろうか。
 Mc6101形はもと愛知環状鉄道の電車を譲り受けたものだが、何を考えたのか1500ボルト用のコントのまま600ボルトで走らせるという、まるでコントのようなことをやってしまったクルマだ。かつてパシフィック・エレクトリックで、1200ボルト対応のコントのままどこぞから移籍してきた電車があって、600ボルトのPEでのろのろ走っていたことがあったらしいが、70年のときを経て何も福井県で再現することなかろうに……。と思わずにはいられない。
 で、愛環時代はMT46モータだったのだがこのモータ、ある程度回ってくれないとロクに力がでないので、本当ならMT55あたりに取り替えるといいんだが(いや、それ以前にコント変えなよ……)、あいにくMT55は外径がでかくφ860の車輪にはちと塩梅が悪い。そこでMT46よりは若干ましなトルクを発生できるMT54に載せ変え、さらにモータを4モータから3モータにして端子電圧を200ボルトとした。ちなみにギア比は4.82。起動トルクを考えたら5.6はほしいところだが、そうすると高速……といっても45キロから上という話なんだが……がつらくなるのでこの辺で妥協せざるをえないだろう。
 で、この前代未聞なセッティングがどんな走りを生み出すかというと、これが意外や意外。ローカル鉄道らしいなんともしっとりとした走りになるのだからおもしろい。
 ノッチを一気に叩き込む。カムは永久直列8段(!)+弱め界磁4段。トルクがしょぼしょぼなので、最初の3段くらいは事実上捨てノッチで、S4あたりでやっと動き出す。そこから緩慢に軽い前後動を伴いながら進段。WFに入って45キロくらいまではそれなりに加速はするのだが、60キロくらいでうんうん唸るも速度が伸びない。いくら界磁を弱めたところで、叩き込める電圧がマックスで200ボルトなんだからどうしようもない。大体65キロくらいで加速は頭打ちになる。電流を増やせばいいって? 地方民鉄にそれを期待するか?
 MC6101の自重は40トン。それを実質64キロワット(120×0.533)×3基でまわすのだから……まあ電流がどんくらい流しているのかわからんので360アンペアくらい(んまぁ贅沢)流していると仮定して雑な計算をしてみると……加速力1キロ/秒程度。電流が350アンペア割ると1キロ切っちゃうそんな感じ。ああ、実際乗ってるとホントゆるゆる加速するもんな。
 そんなわけで乗っていると本当にのんびり加速する電車なんだが、乗り心地はこれがなんとも言えず、このスピードにマッチしていて悪くない。DT50ライクなく浮きばね台車と線路のマッチングがいいのか、たとえるなら凪の海を小船に乗っているそんな感じ。ボルスタレス台車ではあるが重量があるので復元力をしっかりとボディが殺しているので、カーブでの不快なヨーイングもない。まあ、せいぜい時速65キロでヨーイングもへったくれもないが、少なくともMC7001形の野蛮な走りよりも俺はMC6101の軽やかなまったりとした走りが好きだ。
 電車でありながらどこか、客車のようなやわらかい走りはおそらく、MC6101形意外では味わえないものだ。「乗り鉄」ならその乗り心地を味わうためにえちぜん鉄道に出かける価値あり、としておこう。
 何をとちくるったか、1500ボルトのコントを600ボルトで運用した結果、珍妙な走りの電車が生まれた。それは「理想ありきの緻密なセッティング」とはいえないかもしれない。とはいえ、えちぜん鉄道がなんとか商品として成立させるためにさまざまな工夫を凝らした努力のあとを走りになぞらえて楽しむのはなかなかの粋というもの。福井~勝山間およそ60分。MC6101形の数奇な生まれを反芻しながら、文字通り揺られにでかけてみてはどうだろうか。
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