趣味の話ばかりになってきたので改題。模型やおもちゃや実車など、鉄道にかかわるそんな話をつらつらと。好きなジャンルは民鉄と新幹線ですが、最近は新幹線成分が多めですね
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E001形〈トランスイート四季島(以下四季島)〉の性能曲線。直流と交流で微妙に違うけどたいした違いじゃないので直流の性能曲線を例に解説。フルステップで1.5km/h/sの加速力を架線モードなら46km/hまでキープしているのが目に付きます。〈四季島〉の編成質量は536.7tありますが、あの図体の割りによく走るんだね! ってのがこのグラフを見た正直な感想ですね
高速域もギアリング5.50のおかげで悪くない。130km/hでも0.14km/h/sの加速余力がありますから、東海道本線みたいな列車密度が高い区間でもダイヤを痛めない。思ったよりちゃんと「電車」してるな…と思いましたが、よく考えてみればこれ、定員時の加速力なのよね。本来なら編成質量に満車時の旅客(65kg×乗車人数)を加えなければなんだけど、〈四季島〉の場合…あ、定員以上乗ることはないのか(※)
そう、通勤電車はなんとなれば2,000人(130t)のペイロードがかかるのでその分軽量化に神経質にならなければならないんだけど、たかだか34人のペイロードを運ぶ〈四季島〉なら、通勤電車よりも100t近く重くなろうが性能にはなんら影響はないんだよね
C/Iが吐き出す電流も1モータあたり103.4Aなんで、目だって大電流を食うという感じではないですね。ですから6M4Tでパンタは直流区間4基。交流区間では2基しか上げません。 ぶっちゃけE531系ですね走りの風合いは。つまり〈四季島〉は、通勤電車のようにわんさか人が乗らない分を設備に振り分けているので、ぶっちゃけ走りそのものは満車のE531系と大して変わらんね、という話。つまり、ゴージャスな気分でラッシュ時のE531系に乗れば気分は〈四季島〉というわけ。勝田~上野2,235円で〈四季島〉気分を楽しもうぜ! すし詰めだけど
閑話休題。ちなみにE233系の編成質量が341.6t。〈四季島〉は536.7t。E531系に定員の250%に相当するペイロード229.45tを加えると571.05t。ね? 〈四季島〉は決して重たい電車ではないわけです。ただ、通勤電車は高需要区間で使うこと前提なので比較的ロードには無理が効きますので、フルステップは175Aかかりますし、ギアリングはE531系の場合6.06です。
しかし〈四季島〉は103.4Aにギアリング5.50。これは勾配がきつくなるとてきめんにナマクラになってしまいます。上の表でも25‰だと80km/hで均衡しちゃってますよね
非電化モードになると架線から大電流が貰えず、エンジンからの限られた供給電力で間買わなくてはならないので質量がシビアに効いてきます。1号車と10号車のエンジン出力は1,800kw。そこから1247KVAを出力します。これを12モータで割ると103.9KVA。効率がわからないので実際の出力はちょっと見えませんが、少なくとも140KWモータがフルパワーで回るような電力は供給されません。だって1247KVAをすべて走行電力に回せるわけじゃないんですから
ですから、フルステップでも25‰だと40km/hで均衡。120km/hでの加速余力が0.073km/h/sだから、もうほとんど加速していないのと一緒ですね。目安として加速力が0.1km/h/sあればあと10km/hくらいは上乗せできますが、加速に時間がかかりすぎて実用的ではありません。
ですから上の性能曲線で言うと、エンジンモードでの実用速度はいいとこ80km/h(加速力0.11km/h/s)ってところかな? おおむね211系が110km/hで力行しているイメージの走りですね。って、211系すげーな!
まあ、JR東日本管内および北海道の非電化区間で〈四季島〉が100km/hを要求されるシチュエーションなんてまずないでしょうから割り切ったんでしょうね
〈四季島〉の走りをこんな感じに布団の中で想像すれば、気分だけでも〈四季島〉を楽しめるかもしれません。北海道の原野を80km/hくらいで走る〈四季島〉を想像しながら寝るのも乙なもんです
(※)搭載する水の質量がバカにならない(3,600l積んだらそれだけで3.6t増加するわけだし)んだけど、性能曲線にそれが含まれているかどうかはわかりません。ていうか水を載せずに定員乗車ってのは考えづらいので、水も積んでるものと考えています
上の図は都電9000形の性能曲線です。ノッチは4つで架線電圧から端子電圧は540V。高速電車に比べて電圧が半分なので当然電流がその分大きくなるんですが、車体が小型なのと最高速度が40km/hなので、4N(ノッチ)でも150Aといったところ(なぜか電流のグラフが12A 刻み、電圧が35V刻みになっているのでグラフの読み方に注意してください)
このトルクの出方が面白いのは、ノッチ曲線が重なってないんですよね。おそらく40km/h以上でクロスするとは思うんですが、都電の車両は40km/hでリミッタがかかってしまうため、グラフもそこで途切れてしまいます
で、端子電圧は540Vですが、グラフだと4Nでも400Vくらいまでしか上がっていません。そして電圧のグラフはそれぞれのトルクが維持できなくなる近辺でクロスしているのがお分かりでしょうか。1Nと電圧がクロスするのが6km/h付近、2Nが11km/h付近、3Nが17km/h付近、そして4Nが25km/h付近です
これ、もしかしたらですが、7000形みたいなダイレクトコントローラでのフィーリングを残しているんじゃないかって気がするんです。通常の運転ですといきなり4Nに叩き込んでいけば、25km/hまで3.1km/h/s(250%乗車)で加速していきますが、1ノッチスタートで電圧にあわせてノッチを25km/hまで手動で入れると、トルクの出方が7000形のような電圧制御っぽい動きになるんですよ。たしか都電7000形のノッチは9ノッチあったと思いますので、7000形そのまま、というわけには行きませんが、ダイレクトコントローラの操作に慣れた人でも違和感なく操作できる味付けになってるのかな、と性能曲線を見て思ったのです
実際問題、路面電車は発車直後は信号の様子をうかがいながら微速で走るシチュエーションもありますし、王子や大塚の急勾配を登るときは粘着限界を考えて引張力をあまり大きくしない(=空転させない)運転も必要なので、各ノッチはそれなりに意味があるものと思います
ていうか、レトロ電車は外見だけでなく、実は運転特性もレトロ風、なんて面白いじゃないですか! もっともブレーキは電気指令式なので、7000形のSM3とは似ても似つかないフィーリングなのですが
9000型の運転台です。マスコンがそこはかとなく7000形風なのは、単にレトロ電車だからという理由だけではないような気がするんですよね…8500型の1次車で横型ハンドルを採用したものの使いづらいと縦型に戻された経緯もありますし、これもまた『デザイン』の範疇だと思います
中国の高速鉄道は従来、川崎重工業など主に外国の技術を取り入れながら開発を推進してきた。復興号は中国が完全な知的財産権を持つとされ、海外市場で今後、新幹線輸出の拡大を図る日本と競合するとみられる。 従来の高速鉄道車両は、胡錦濤前主席のスローガンに基づいて「和諧(調和)号」と名付けられていた。現在も全国各地を結ぶが、復興号にバトンタッチしていく。 中国メディアによると、復興号は時速400キロ以上が可能。ビジネス利用が多い「ドル箱路線」の北京-上海を6時間弱で走る。 時事ドットコムニュース |
※政治的な話は一切しません
さて、スペックがわからんのでなんともいえんが、ノーズの形状を見る限りでは、ゲンダイのトレンドを押さえつつ中国独自のメソッドをしっかりと持ってるよね。ノーズ側面ををえぐっているのは断面積変化のつじつまあわせ。日本だとここに微気圧波の調整が入るから盛ったり削ったりが激しくて三次曲面の集合体になるんだけど、大陸では断面の小さなトンネルもなければ連続した市街地が続くわけでもないのでシンプルな二次曲線でまとめている。
ノーズはシンプルにまとめられればそれに越したことはないんです。運転台もノーズに埋め込んでしまえば斯様にシンプルにまとまる好例だと思います。日本の場合精密停車が必要なので、側面視界をおろそかにできないためコクピットを飛び出させていますが、そのためにコクピット周辺で断面積変化が大きくなってしまう。それを防ぐために前後でノーズの曲面を調整していかなくてはならず「余計な仕事」が増えてしまう。その結果があの複雑なノーズ形状なわけです
このあたりもお国の事情が反映されるところです
ただ、ノーズ~スカートの二段階のくびれは個人的に疑問点がないわけではない(空力的には80年代後半に否定されてる)けど、ノーズ上面は中国の線形にあった空力特性に見える
すなわち断面積変化を緩やかにして空気を上方に跳ね上げる構造ながら、日本のように市街地をかっ飛ばすわけでもなく軽便鉄道のようなトンネルをくぐるわけでもないのだから、シンプルな二次曲線の組み合わせにして、高速運転に対応してる。足回りがまったくわからないので断定はしないけど、(ギアリングを2.42あたりに設定して、力任せに加速すれば)400km/hはあながちホラではないんじゃないかな?
たしか中国に技術供与したモータは、E2系のMT205。定格4140rpm、ピーク6,120rpmのよく回るモータである一方、質量450kgと新幹線のモータにしては重い。つまり峠越え用のトルクもそれなりに有している優秀なモータなのよね
たまたま手元にMT205、というかE2系の力行曲線があったので上に画像として載せるけど、3‰明かり区間だと、トルクと走行抵抗が300km/hでクロスする。つまりここが均衡速度になる(トンネルは走行抵抗を10%増しで計算)んだけど、平坦線だとギアリング3.04なのに320km/hくらいまで引っ張れる
つまり言い換えれば適切な空力性能を持ったノーズを取り付けて、ギアリングを2.42(Fastec360Sがこのギアリング)くらいにすれば、400km/hはともかく380km/hくらいなら(騒音とかそういう面は考えないとして)平坦線条件で達成可能なんじゃないかなって気がする。電流値も300km/hで105Aくらいだから、ここでガツンと144Aくらいまで活を入れてやれば回ると思うんだよね
で、MT205モータってのは1994年、今から20年以上前の技術だから、今だったらもっと軽くてよく回ってトルクの出るモータを作れるだろうしね
CRH2-Wikipedia
想像の上を行ってた。365kwという出力はおそらく(根拠はないけど)端子電圧を2300V、電流は144Aとかそんな感じか。2.37って言うギアリングだと、低速側はトルクを稼ぐために200Aオーバーで起動したりするのかな。とりあえず1.6km/h/s程度の加速力でよければまあそれほど難しい数字じゃない
なんていうかすごく大陸的な走りをイメージできるね。駅間距離100kmくらいの直線が続く大陸の線路を悠然と加速して380km/hまで加速する新幹線。日本のそれとは走りの感覚がずいぶん違うんじゃないかな
それにしてもやっぱりスカート部の造型が疑問なんだけど。ここで流速が落ちて抵抗になるんじゃないかな…って考えるのは、島国軽便鉄道の新幹線ばかりみているから「すっげー無駄」に見えちゃうせいかもしれない
スタイルだけ見ると〈復興〉はEU規格への対応も容易みたいだしね。日本は軽量化を第一としてるから、EU規格にはどうしても(現状は)適合できてないし、そもそも日本国内ではそれをする必要もない。それはそれで間違っちゃいないんだけど、海外への販売を考えたときEUの安全基準に適合してないってのは足かせになるよねやっぱり
「専用軌道を300km/hで静かに走ります」というセールスポイントに、世界各国がなびくと思えないんだよ。各国の気持ちは「もう少し安くできないの?」だと思うし
ここから先は政治の話もからむのであれだけど、JR東海のN700Sは海外への販売ももくろんでデザインされている。N700系の価格が1両あたり4億6000万円だけど、中国は当然これより安く造れる(日本のような病的な環境性能が日本以外の国で必要とされてるとも思えないし)だろうから、もし日本が新幹線を世界に輸出しようと思ってるなら、日本基準の性能を見直す必要はあると思うよ
もっとも、それをしたからって安く造れる保証はないんだけどさ
以下は余談の余談
出典:内部資料
上の画像は300系新幹線の性能曲線。えっかくなのでE2系と比べてみると面白いかと。
上から引張力、加速力、走行抵抗のグラフです
加速力は1.6km/h/sを140km/hくらいまで維持するけど、300系はそこから走行抵抗に派手に負けて、270km/hでは加速余力がほとんどない。トンネルでは270km/hから上には加速しないようなヘロヘロっぷりになるのが、このグラフからわかります。グラフにはないけど平坦線均衡速度は298km/h。なんとなくそのへんで引張力と走行抵抗の線がクロスしそうですよね。ギアリング2.96、ピークで5,470rpmを出すモータでも10M6Tならこんなもんです
E2系は160km/hくらいまで1.6km/h/sを維持して250km/hから上はのほうはモータの回転数とMT比で維持してる感じですね。8M2Tの10両つなぎならギアリングを加速寄りに振ってもこのくらいの性能が出せちゃう
じゃあ同じことが東海道新幹線でできるかと言ったら無理です。東海道新幹線は列車密度も高く16両つなぎなんで、電力供給がシビアなんだな、ってのがこんなところからもわかるわけです
だからこそ、乾いた雑巾を絞るような軽量化でモータ車の数を増やさなくてはならなかったのです。たとえばC/I(主変換機)なんて300系は2,825kgあったのがN700系では1,538kgまでダイエットしたわけです
なお、N700Sでは1,000kgを切る予定です
話がだいぶ脱線しましたけど、新幹線ってのは国土や路線事情に最適化する、標準化のたいへん難しい電車なので一概に中国がすごいとか日本がすごいとか言えないんですよ、というお話でした